たぬきとくまの台所

平成生まれのアラサーのたぬきとくまの夫婦の台所

夏、ひやしおでん。

 当家としては、夏はおでんの時期であると信じる。

 ーー「正気かお前」という顔をされた気がするな。

 もうちょっと前後関係をお聞き願いたい。

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 夏は、「ひやしおでん」の時期だと信じる。「冷やす」。「冷やす」ことが大切です。これは何度でも主張していきたい。

 とはいえ、おでん作ってタッパーに分けて冷蔵庫にドーンで美味しい冷やしおでんができるなら苦労はない。ていうかまずおでんの主役である大根からして時期じゃないんですよね。

 あと、大根という食材は素直そうな見た目に反してすっごいじゃじゃ馬だと僕は思っていて、コンビニおでんみたいに癖なくキレイに煮るのが難しいのだ。なんか苦くなったり、白く濁って煮えたりする。「良くない大根味」でおでん鍋全体がやられることもある。きっと当家が料理下手なだけではないと思う。

 ですからこのへんを、当家ではぜんぶ冬瓜を主軸にした夏野菜に置き換えてしまいます。

 

 というわけでメイン具材は以下の通り。

・冬瓜

・トマト

・夏向きの練り物

・緑の野菜(オクラとかシシトウとか)

 


 

 

 あとはおでんの汁だけれども、今回は酒と出汁醤油でやりました。前回掲載したカマダのやつね。

 甘さを控えめで作らないと、練り物の糖分が出て甘ったるくなりますのでご注意を。

 

 冬瓜は皮をむいて下茹で、トマトは湯剥きして食べやすいサイズに。ミニトマトでも可。オクラだったら板摺りして下茹で。シシトウだったらヘタとって焼く。万願寺とかでも同様ですね。このあたりは「野菜室掃除のためにやる」くらいでいいと思います。ナスが冷蔵庫にわさわさあるんだったら、素揚げにして追加してやっても美味しいと思うし。パプリカとかでも凄く良いと思うんだよね。そのへんはお好みで。

 

 あとは冬瓜と練り物をあわせてひと煮立ちさせて、タッパーにうつし、他の野菜類を盛り合わせて一晩くらい冷やしておく。この間に煮込んでいない野菜類にも味がうつるという寸法だ。

 

 本当にこだわるならば「炊合せ」ではないけれども、メイン鍋とは別に味濃いめ、塩強めの「野菜専用タッパー」を作って、野菜類はそっちで別漬けして盛り合わせる。これは練り物のたぐいが美味しく煮えるために必要な塩分量と、野菜を美味しく食べるのに必要な塩分量が違うから。野菜に合わせるとおでん全体が塩っ辛くなりすぎる。練り物にあわせると今度は味が少々薄い。

 とはいえこのへんは手間もかかるし、好みもあるしで、必須の工程とは考えていない。お好みでどうぞ。

 

 で、だ。

 こうやって冬瓜やトマトをぶっこんで作った冷やしおでんのいいとこはなにか、セールスポイントはなにか、っていう話なんですが、やっぱり「大根の相手をしなくていいところ」だと思うんですよ。そこどんだけ推すんだ

 ぶり大根とかもつ煮みたいに、濃ゆい味付けでこっくり煮てしまえる調理法ならばそんなに苦労はない。大根が何味だろうが、醤油とかみそとか砂糖とかの物量に飲み込まれてしまう。しかし薄めの味で淡く味をつける(当家のイメージです)おでんの場合、強い味付けで大根の棘を塗りつぶすことができない。

 

 このポイントを技術で乗り越えるのは、可能だと思う。

 でも素人にはできないと思った。そこで潔く諦めた。そもそも大根の時期じゃないし。

 結局、大根を使わなきゃ良いんじゃないかと。そもそも時期じゃないしと。そういうわけで冬瓜の抜擢である。実際、漢方ではウリ科の植物は食べると身体を冷やすと言うらしいし、大根を無理くり使うよりも夏向きだと思うんですよねぇ。

 

 難しい作業は本当に何もありません。でっかい冬瓜をスーパーから持ち帰ってくるのがこのメニューでいちばんめんどくさい要素だとすら思う。それを皮剥いて下茹でするのがいちばんだるい。あと時点でトマトの湯むき。

 それらさえ済んだら、ちょっと煮てタッパーに流し込んであとは冷蔵庫に一晩任しとくだけなので、おでん自体の調理肯定としては全然イージーだと思う。

 

 夏は、冷やしおでん。夏酒といっしょにいかがですか。

 ぜひお試しください。