たぬきとくまの台所

平成生まれのアラサーのたぬきとくまの夫婦の台所

海苔の実力

 海苔というものについて、特別ポジティブなイメージを持ったことがなかった。

「ウチは海苔を愛してやまないぞ!」という方が居たら申し訳ないが、長らくくまは海苔という食品について、海苔巻のときにつかう飯の土台というか、ラーメンの薬味というか、そういう特に味がどうこうといった価値観を組み合わせないで生きてきた。

 兎に角海苔は海苔の顔してそこにいることが重要なのであって、うまいまずいというのは、ほんとうにお高い一握りの海苔にのみ発生する、ウチには関係のないマターだと思っていたのである。

 

 ところがどっこい。

 うまい海苔は案外身近に転がっていて、案外普通に「のりがうまい」という体験が出来たので、この度はソレを報告したいと思います。

 

 良い海苔は、高い。

 それはもうお約束だ。特に板海苔。山本山とかが有名ブランドでしょうか。あと地方によっては浜乙女とかかしら。

 いまググったところによると、良いのは一箱8000円くらいする。そんなもんを日常的にはとても買えはしない。

 

 しかし、あれだ。

「味が良いもの」がすべからく高いわけではない。その代表例として、道の駅とか物産展で買うような品物は、そんなにお高いわけじゃないけれども、ちゃんと美味しいじゃないですか。

 然るべき機関による選択とブランディングを経ないで、産直みたいな仕組みで食卓に届いてくるタイプのやつは、お宝めいた、クオリティの割にお安い商品がごろごろしていたりするーーと思う。

https://yunohana-shop.ocnk.net/product/7

 そんな次第でこの度購入したのは、南伊豆漁協謹製「磯の恵み」。岩のりをひっぺがして焼いて乾かして詰め合わせたやつだ。どこそこ株式会社ってんではなくて生産者が「漁協」ってあたり、なんか信頼できる感じがしてくるでしょう。

 明示しておくが、この商品は板海苔ではない。なので香りと食味と歯切れの両立、みたいな、良い板海苔に求められる諸要素は、当然ながら満たされることがない。ただその分、味と香りに仕様をガン振りしているので、たとえばお蕎麦の薬味にするとか、お味噌汁の具に浮かべるとか、そういった使い方をするぶんには好適である。

 

 恥ずかしながら、「海苔の味」というものがあることをくまはこの商品で初めて知った。海苔というのは「風味だけ」の食べものだと思っていたのだ。

 ほらだって、ポテチとかの「海苔塩味」って要するに海苔臭い塩味だし、海苔の佃煮だって海苔臭い佃煮味じゃないですか。「海苔の味です!」っていう自己主張でもって舌に触れるモノじゃなかったんですくま的に。なので、海苔というのは風味原料だと、この商品を食べるまでは思っていたわけですよ。

 

 そうしたらこの商品。良い風味・香味がするというのではなくて、ちゃんと「海苔の味」に舌が晒されるんですよね。初めての経験だった。

 出会いは近所のスーパーでやってた催事である。興味本位で買ってみて、そしたらあんまり風味豊かで、そして「食材として」美味しくて、以降数日おきにスーパーへ出向くたびに、家に在庫があるのに一つずつ買い足して、以降当家からこの海苔がなくなったことはありません。ーーなどと書いてしばらくしたら無事にスーパーからこのグッド海苔の在庫はすべてはけてしまい、当家は無事海苔難民になった。

 蕎麦に素麺に、また味噌汁に、そのままおつまみにと八面六臂の大活躍をしている。もっと早く知れたら良かった。

 

 しかし具体的な食レポがないあたりで察していただけたと思うけれど、「海苔味」というものを人に説明するのは難しい。うっすら塩辛くて滋味があって、という感じなのだけれど、そもほらコレ読んでいただいている中で「海苔の味」ってイメージできていないでしょ。

 「ないもの」をゼロから記述するのは、「既知のもの」のイメージを想起させるより難しいんですってほんとに。

 

 今回のご紹介した海苔は、販路がほんとうに無い。通販できなくはないが、かなり手を出すのに勇気がいるお値段になってしまう。

 そこで今回のエントリのシメとしては、今回紹介した上掲の「磯の恵み」じゃなくてもいいから、ちょっと海苔にお金かけてみて欲しい、気にかけて欲しい、という方向で終わりにしたいと思う。

 和食や麺類、日本酒やビールの相手をするのに持ち駒が増え、いっそう豊かな心持ちになりますのでとてもおすすめです。