たぬきとくまの台所

平成生まれのアラサーのたぬきとくまの夫婦の台所

万能にして無敵。ねぎべーぜ。

 今日のお題は表題のとおり「ねぎべーぜ」である。

 まぁ要するに、ネギで拵えたジェノベーゼソースのことだ。

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本当はこの絵の5倍くらい食べてます

 

 

 最近、当家ではフードプロセッサーを導入した。そしてコイツをぶいんぶいん唸らせ、いろいろなものをみじん切りにしては料理をしている。

 ネットの海を徘徊し様々なフードプロセッサー活用レシピに目を通す中で、当時実家からの救援物資として冷蔵庫に唸っていた大量のネギ・わけぎを賢くたくさん使い切れる一種の「大量消費レシピ」として、そしてまた激ウマ調味料として、あるレシピが、当家の生態系(?)にまたたく間に定着した。

 今回は、そんな「ねぎべーぜ」について紹介したい。そしてみんな大いにQOLをあげていただきたいと思う。

 

 さて、この「ねぎべーぜ」について言及していく前に、ある事柄についてクリアにしておかなくてはならない。

 「ネギの青いとこは可食部か否か」という問題である。

 

 もしも「全然普通に食うとこでしょ」とお感じなのであれば、たぶんこのレシピは、全然抵抗なく受容していただけるものと信じる。

 しかしもしも「いや、あれは捨てるところだけど臭み消しに使うことはあるよね」と感じておられる場合には、「ねぎべーぜ」はいささか抵抗のあるレシピになるかもしれない。なんせ主たる原料はネギの青いとこであるからして。

 

 そもそもこのレシピ「ねぎべーぜ」は、ホテルオークラの料理長を務めた根岸さんが考案した、日頃の料理で捨てちゃう「ネギの青いとこ」を活用するためのレシピである。みんなご存知ジェノベーゼソースに見た目が類似していること、そして考案者が根岸さんであること、そしておそらく材料がネギであること、そのあたりが合わさって「ねぎベーゼ」というらしい。そのあたりは、下記のレタスクラブが詳しいので各位読んでおいてください。

 

www.lettuceclub.net

 

 本義的には、ジェノベーゼソースにおいてバジルが担う部分をボイルした長ネギの青いところで代替するレシピなので、オリーブオイルや松の実、にんにくと合わせて粉チーズがふんだんに入るのだけれど、上掲の記事内で言及されているとおり、

パルメザンチーズはよく合いますが、入れないほうが幅広い料理に使えます。料理に応じて入れてくださいね

とのことなのでその助言に従い、当家では基本的に粉チーズを入れない、葱ペーストの状態を「ねぎべーぜ」とひらがなで表記・呼称している。本稿の記述もそれにならう。

 あ、作り方とか材料とかはもう全面的に上掲レタスクラブを見てください。ひとさまの書いたものを我が物顔で開陳するのは違うと思うので、ここでは製法についてはなんら言及しません。

 

 さて、そんな「ねぎべーぜ」、チーズを入れなくとも、にんにくのパンチとオリーブオイルの濃厚さ、ねぎとオリーブオイルの爽やかな香味に松の実のナッツ感脂感が加わって全然おいしい。くまは昼メシなどに、食パンを焼いて「ねぎべーぜ」をあしらって食べる。なんだかシャレオツなお店に来たような心地がする。

 もちろん、ジェノベーゼソースを原型にしているからにはパスタとも相性抜群、粉チーズでコクを足せばロングでもショートでも、どんなパスタもどんとこいだ。ああでも流石にラザニアは手に余ると思うな。

 とりあえず今夜は、豚ロースを塩コショウであっさりソテーして、ねぎべーぜをあしらって食べますぐふふ。ワインが捗るぜ。

 

 ――というわけで、ネギでジェノベーゼソースみたいなことをやるとめっちゃうまいぞと、それだけ言うつもりのエントリだったのだけれども、記事を書きながらあることに気がついた。

 一般家庭には、普通長ネギの青いところなんかありはしないのである。いやあ困った、記事の根本が揺らいだぞ。

 

 スーパーに売ってる長ネギは輸送とか諸々の都合で頭を落としてあり、青いぶぶんはほんのちょっぴりしかない。身の部分というか、盛り土をして白く仕上げた部分でもねぎべーぜになることはなるのだろうが、色合いといい風味といい「これじゃない感」が強い代物になるのは疑いない。

 当家では、実家からふんだんに送られてきた「わけぎ」が傷みかけたのであわてて茹でてソースにした次第だが、当家のように、家庭菜園を自宅や実家にかかえてでも居ない限り、ネギの青いところだの「わけぎ」だの万能ねぎだのといった代物は、おそらく間違いなく、野菜室で唸ってなどいはしないだろう。

 

 かといって、「ねぎべーぜ」が成立するほどの分量のわけぎ万能ねぎ長ネギの頭をスーパーで買って用意してくれなどというのはコスパが悪い事おびただしく、到底推奨できない。

 

 なので、もし万が一にも、実家からだのお隣さんからだのといった退っ引きならない事情で――あるいは死ぬほど長ネギを買って青いところが余ったなどのどうしようもない事情で、なんとかしてこいつを消尽しなくてはならぬと、そういう場合にのみ、「ねぎべーぜ」をお試しいただきたい。

 悪しざまな言い方をすれば「邪魔者を片付けるレシピ」なのであるけれど、あんまり「ねぎべーぜ」のソースとしての出来がよいものだから、いっそう邪魔者たちが欲しくなってしまうことは請け合いである。

 鮮度とか流通とか規格とかいろいろ問題はあるのだろうけど、ネギの青いところ、需要はあるのでもっと売って欲しい。

大根葉の餃子がうまい件

「いやー大根葉は食べるものじゃないですうさぎの餌です」
という方には本エントリは無用ですありがとうございました。

 

 と冒頭から読者を選んだところで前置きを話していくけれども、先日、実家から大根の葉っぱがわさっと届いた。

 くまの実家は家庭菜園をしている。

 流通段階では葉っぱをざっくりと切られている大根だが、畑に生えている段階では当然緑の葉っぱが頭の上にわさわさと生えているわけで、そいつを収穫すれば当然、白い根っこのほかに、大量の葉っぱがとれるわけだ。

 くまは、実家で大根の葉っぱを食って育ったし、あれはふつうに可食部だと認識しているので、実家から野菜、とみに大根を送ってもらうときには、葉っぱもつけてくれろとお願いするのだ。

 なお、両親祖父母とかなうなら無農薬、現実的には減農薬くらいで栽培したがるため、実家野菜にはしばしば招かれざる虫さんがついてくるが、くまは虫のたぐいが震え上がるほど苦手なので、頼むから普通に農薬を使ってくれと思っている点は余談である。

 

 さて話を大根葉に戻すけれども、従来の当家では、大根葉といえば梅しらすふりかけであった。大根葉を小口というか微塵というか、とにかく小さく刻んで、ごま油でいためて、しらすと梅干しのたたいたやつを炒め合わせ、醤油と酒で調味し、水分を失うまでカラカラに炒めるのだ。これを白飯と混ぜて食べる。野趣と地味にあふれていてたいそうよい。

 

 しかし、あふれかえる大根葉への対処法がこの一辺倒であると、流石に飽きてくる。そしてこの解法で生産できるのは所詮というかなんというか、ふりかけであって、単体でばんごはん戦線の一翼を担えるほどのキャラではないのだ。

 つまり、この大根葉ふりかけがあってもなくても、晩飯の献立立案には困るわけである。

 

 そこで当家は考えた。

 どうせ大根葉を細かく刻むなら、そのあとひき肉と練り合わせて餃子にしたらいいんじゃないか。餃子ならふつうに晩ごはん戦線で主力になれるでしょ。

 

 そんな着想から爆誕したのが「大根葉ぎょうざ」である。

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 これは、結論からいうけどビールが無限に飲める味です。

 

 キャベツだのニラだのといったお育ちのよい野菜と違い、大根葉はやはり野趣があって丈夫である。塩もみにしてもそんなにシナシナにはならない。しゃくしゃくと自己主張をしてくる。

 野菜餃子のように肉には助攻を担わせる形式では、野菜の自己主張が強すぎ、あんまり晩飯としてテンションのあがらない、野菜炒め詰め合わせみたいな餃子になってしまうのではないか、と当家は危惧した。

 そこで当家では、大根葉を刻んだところに、スーパーでいちばんでっかい単位で売られている豚ひき肉を練り合わせる。大根葉の分量にもよるけれども、まぁ最低でも500gはいれていただきたい。なんなら1キロいれてもいい。主攻は肉にやってもらって、野菜というか大根葉は助攻である。肉餃子Feat.大根葉くらいのイメージでタネをつくるのだ。あとお好みで生姜とかネギとかにんにくとかを足す。

 なお、味付けのほうは、創味シャンタンでも味覇でも香味ペーストでもオイスターソースでも、なんでも美味しかったです。おうちにある調味料を足し合わせてうまいことやってください。

 また、具材にしいたけを微塵にして足しても旨味成分がたされてうまいし、エビを荒く刻んで混ぜても食感が増してたいそうよい。このあたりはご近所のお店の在庫状況、お好み、財布事情などを勘案して「これをいれたらうまそうだ」というやつを各位で模索していただきたい。

 

 で、このタネを片っ端から包み、並べ、焼くわけだが、餃子を蒸し焼きにするに際してはお水でなく熱湯を使うと美味しいですぞ。これ豆な。

 

 で、この餃子がとてもよいのである。

 肉のほうが多いのでガツンとした食べごたえがあり、また大根葉の「葉物の風味」、悪く言えば青臭さ、金属感が強いので、肉ばっか食ってる時のツラさ(アラサー以降になると顕著になってくるあれである)が緩和される。

 そして大根の葉っぱ部分はいわゆる緑黄色野菜に相当する部分であるので、栄養成分的にもけっこう優れている。らしい。

 

 うちはだいたい一回で60個くらいの餃子を包む。ラーメン屋とか町中華換算なら、これは10人前~12人前の計算だ。実際、肉餃子って重いし、いちどきに食べる量となるとまぁ10個以下が具合がよいのかもしれない。つまり二人で食べるとなると5、6食ぶんっていうあたりになるのだろうか。

 しかしてこの餃子を焼くとなると一時に20個は焼かないと収まらない。60個包んでも二人がかりで3食分、下手をすると2食分である。使っている肉の量のわりに足取りかるくホイホイなくなる、そんな恐ろしい食べ物なのである。

 

 まぁ多くのご家庭では家庭菜園なんてやっていないし、畢竟、大根の葉っぱなんて入手することはないと思うのだけれども、もし「大根の葉っぱをてにいれたぞ!」なんてことがあったら、騙されたと思って餃子にしてみてください。美味しいので。

「おだし塩」なる食いしん坊ホイホイについて

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 魅力的に”見える”んだけど、実際使うとなると困るアイテム、というのは台所用品や文具においてしばしば見られる、ようにくまは思う。

 ~~塩、なんてその極みだ。抹茶塩とかカレー塩とか、お店で小瓶に入っているのを見るととても魅力的に見えるのだけれど、じゃ実際それを買って使い切るほど天ぷらとか食べるんですか、って話だ。

 

 あの手の塩というのは、多くの場合それ単体でなんにでも使えるといったことはなくて――いや販売側はあれにもこれにも使えると考えているかもしれないのだけれど、こちらがわにそれを汲み取るだけの知識技能がなくて、なんとなし死蔵されがちであるかのように思われる。で、だいたい湿気てカチカチに固まって使いづらくなって捨てるのだ。

 

 しかし、そんなちょっとびみょうな奴らばかりが、フレーバー塩ではない。

 もっと便利で、使いでがあって、そいつが備わっているとご飯情勢が激変するようなプレーヤーを、当家は先日捕まえた。

 愛媛県に居を構える「はぎの食品」。こちらの人気アイテム「だし塩」シリーズのひとつ、「鯛塩」である。

 

haginoshokuhin.co.jp

 

「国内産の真鯛を使用することにより、味わい深い和風料理によく合うだし塩に仕上げました。

 炊き込みご飯、茶碗蒸し、天ぷら塩、お吸い物など様々な料理にお使いいただけます」

 とは、製品パッケージ裏側の能書きだ。つまるところよーするに、塩加減がいい具合の鯛出汁がたちどころにつくれちゃうお塩なのである。

 

 ひとつ、つい今朝編み出した手抜き料理をご紹介しよう。

「鯛の天茶」である。

 ご飯をもり、市販の揚げ玉を散らし、鯛塩をティースプーン一杯ふって、お湯をぶっかけるだけだ。それで芳しい鯛出汁のお茶漬けができてしまうんだからもう驚きだ。

 

 また、この調味料はご飯だの天ぷらだとのいった男子が好きなやつの相手ばかりではなくて、青菜の和え物を鯛出汁味にしたり、といったこともできて大変良い。

 正価では180グラム600円となかなかするアイテムだけれど、それだけのバリューは間違いなくあるので、懐に余裕のある方は、是非一度でいいので、試してみていただきたい。

 

 そしてこの「おだし塩」シリーズ、他のラインナップがくっそやべえのである。

 

・雲丹万能調味塩

・のどぐろだし塩

・鰹だし塩

・昆布だし塩

・牡蠣だし塩

・伊勢えびだし塩

しじみだし塩

・甘海老だし塩

・あごだし塩

haginoshokuhin.co.jp

 

 とまぁ、このような塩梅である。

 殺す気か? 世間に並み居る食いしん坊を。

 あまりに殺意が高すぎる(褒めてる)ラインナップだと思いませんか、あなた?

 

 当家がたまたま真鯛塩と行き合った近所のスーパーでは、真鯛以外は置いていなかったので買えなかったのだけれど、いずれもあまりに強力なプレーヤーではないか。

 伊勢海老だしが香る青菜の煮浸しとか、甘海老の天茶とか、また秒でできるしじみのお吸い物とか、もう全体的に条約で禁じられるレベルのアレでは? という思いが大変強くある。

 

 おうちごはんがお手軽にワンランク強くなる「おだし塩」、おすすめですぞ!


 

黄身の味噌漬け副産物;味噌クリームパスタ

 以前のエントリで、卵黄の味噌漬けについて記した。
 そしてその時、副産物として「味噌」が出ると延べたように思う。

 

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 この、日本酒で緩め、あまつさえ卵黄の成分や水分が出た味噌というのは、当たり前ながら使用後にもともとの味噌容器に戻す事ができない。だから卵黄の味噌漬けを作ったあとには、その旨さを堪能する傍らで、全体の濃度、塩分濃度が下がって保存性の悪化した一定の分量の味噌を、ただちに消費しなくてはならないという別の問題が生じる。

 

 これにあたっての解答のひとつは、お味噌汁。しかも、卵黄の味噌漬けを作る過程で取り除いた卵白をいれたお味噌汁だ。ネギなり何なりをいれてシンプルに作ると手間がなくていいし、なんだったら豚汁みたく具だくさんにしてもいいだろう。
 もうこのあたりはほんとに自由にやればいいのではないだろうか(なげやり。そしてあまりに当たり前の解法に過ぎて、わざわざ紙幅を割く必要性も思いつかない。
 とにかく、各ご家庭の流儀に従って自由な味噌汁をこしらえてみるのは、まぁ面白くないけれども解法の一つです。

 

 そして今回、このエントリで紹介したいのは、パスタだ。
 卵黄の味噌漬けをこしらえて余った味噌を材料として、パスタをつくるのだ

 

 えーー? という疑念の声が聞こえてきそうであるが、話を続ける。
 そもそも、味噌でパスタってどうなのよ、というのは一つクリアしなくてはならない懸案であるような気もする。愛知の某有名喫茶店(?)の「味噌煮込みスパ」ではないけれども、あんまり「味噌+パスタ」という組み合わせは人口に膾炙しているわけでも、市民権を得ているわけでもないように思われるが、どうだろうか。

 

 まず大前提として、味噌+パスタはアリな選択肢だ。
 なまじ某お山で出てきちゃうから味噌味のパスタは偏見を持たれているような気もするけれども、味噌味のパスタは全然美味しいということを、まずは主張したい。

 

 とはいえ。
 ここでおもむろに読者の誰かが、「ほう」と言って味噌汁にパスタを投げ込もうとするのであれば、それはそれで全力で止める。
 しかるべきやり方というものがあるのだ。

 

 一番お手軽うまいのは、サバの味噌煮缶を使ったパスタだ。
 唐辛子とにんにくなり、柚子胡椒なりをオイルで炒め、サバの味噌煮缶をあけて崩す。なんだったら適当な野菜、玉ねぎなんかを加えてもいい。爾後、ゆでたパスタを炒め合わせて食べるわけである。サバ味噌缶が甘辛い向こうから香辛料が食欲をそそり、しっかりとパスタを手繰る(そばは「手繰る」だし弁当は「使う」けどパスタはどんな動詞で受けたらいいんだろう)手を進めてくれる。

 

 さて、このようにして味噌+パスタは全然食えるということで、本エントリ大本命のレシピの紹介に遷移していく。

 

 当家がーー主にたぬきがこしらえたのは、「鴨と葱の味噌クリームパスタ」だ。

 

 なんかさっきのさば味噌缶パスタとの落差がひどいって?
 難しいことはなんにもしないんですよ。当家としてはサバ味噌缶パスタと同じくらいのノリで作れるパスタなのだ。ほんとに。

 

 材料を紹介しよう。必要なのは、パスタのほかに、

・市販の鴨スモーク。やっすい中国産のやつでいい
・長ネギ。いい感じのサイズ感に刻む。青いところも刻んで入れちゃえ。
・適当なオイル
・卵黄味噌漬けの残り味噌
・豆乳

 と、上記のとおりである。

 

 パスタはパスタでいい感じに茹でておいてもらって、同時進行で油を敷いたフライパンで長ネギと鴨スモークを炒め、味噌と豆乳でクリームソースをつくる。よい鴨スモークであれば、皮目を下にして脂を出し、それでもって長ネギを炒めると風味が出てよいかもしれない。

 そこへ豆乳とお味噌を加えるわけだが、あまりグラグラ煮立てると豆乳によくないし味噌の風味も飛ぶので、葱に火が通ったら原則弱火進行だ。グラグラ煮えないように注意しながらクリームソースにパスタをあわせ、絡まったら出来上がりである。特別なことはしない。

 

 で、これがめっぽううまい。
 特に特別なことをしていないが、ねっとりトロトロのソースに仕上がり、パスタによく絡む。

 今になって考えるに、味噌に溶け出した卵黄の成分とか、あるいは長ネギのとろみ成分とかがいい具合に豆乳ソースにとろみを与えるのだと思う。ただの味噌を使うのとは異なり、遠くの方になんとなし卵のケハイがするので、たぶん卵黄のせいだろうが、ソースの成分分析とかをしたわけではないのでよくわからない。とにかく美味しくできるのだ。言及終わり。

 

 で、鴨が葱背負ってやってきた、などというように、鴨と葱はド鉄板のコンビである。
 そしてお味噌汁に葱をいれるように、味噌と葱もまたド鉄板のコンビである。
 また味噌豆乳鍋という概念があるように、味噌と豆乳は相性がすこぶる良い。
 そんな大マリアージュ連合を糾合したようなソースがおいしくないわけあるか? 云うまでもなくめっちゃおいしい。

 

 おもわず当家では「うまい」以外の語彙を失ってしまった。そしてブログ記事用に分析することもわすれ、夫婦の小粋な会話もせず、部活終わりの中学生のように食べ進めてしまった。

 

 このエントリ執筆時点で腹が減っているのもあるけれど、現時点くまとしては、この味噌クリームパスタを作るために、その下ごしらえとして卵黄の味噌漬けをこしらえてもいいかな、などと思う。そんくらいうまいので、前エントリ、卵黄味噌漬けと合わせお試しください。

食べる琥珀! 卵黄の味噌漬け!

 

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 なんだかいきなりシャレオツな(そうか?)タイトルから入ってきたけれども、まぁとにかく今回は、卵黄の味噌漬けなる料理についてなんやかんや言おうという回だ。

 当家にこの概念を持ち込んだのは、
筋肉料理人さんの(https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/kinniku/18-00197)と、
白ごはんドットコムさんの(https://www.sirogohan.com/recipe/kimiduke/)の
2つのエントリだ。

 どうも後者、白ごはんドットコムの記述を参照するなら、以前から料理界隈には存在した概念であって、かのエントリはそれを一般的な分量に再調整したものらしい。
 あれだろうか、旧軍の烹炊レシピみたいに「一升」とか「一斗」とか言ったんだろうか。

 まぁ、卵黄はうまい。
 くまは生卵を苦手としているが(それにしたって半熟卵は許せるので勝手なものである)、しかし卵というもののシズル感や風味が嫌いなわけではない。
 塩っ辛い卵黄というものがまずいわけがない、ということについては全く異論なく理解できる。

 しかしそれにしても、生卵は、ちょっとまぁ、そう、まぁねぇ…。

 みたいな、生理的嫌悪感にやられて、当家は――というか、くまはながらく、このレシピに鼻も引っ掛けなかった。
 あと同時に「水分が出た味噌はどうすんだよ」という心配もあって(これはもう「やらない理由探し」でしかなかったのだけれども)、「興味はあるけどやらないだろうな」みたいな枠のなかに長いこと放り込んであったレシピであった。

 しかしそれは、くまの理屈である。
 腹をすかせた呑んべという世の中でもっともたちの悪い生き物であるたぬきには、そんなことは関係がなかった。
 昨今話題のウマ娘をぽちぽちやっていたら、その後ろでたぬきは淡々とお味噌を料理酒でゆるめ、卵を分離し、キッチンペーパーを敷いて、味噌床に浸かった卵を仕込んでいた。
 なお余った卵白はその日、別の全卵を一個混ぜ込んで、卵焼き卵白マシマシみたいな感じになった気がするがそのへんは覚えていない。とりあえず余った卵白はすぐ焼いちゃうか味噌汁に投げ込んじゃうと美味しいし無駄がないよねっていう話。

 閑話休題、そして待つこと一昼夜。
 卵黄の味噌漬けの完成である。
 この段階では、まだ「半熟卵の黄身が味噌味」みたいな、とろみのあるテクスチャであって、本朝式というか、上掲URLのような半透明になったような硬いテクスチャではないのだけれども、これはこれで半熟卵めいてトロトロ塩辛いかんじでめっちゃよい。
 熱々のご飯などにのっけて、脱水されて固くなった外皮を箸で推し割るともう絵面のけしからなさが大変だ。

 そしてこいつは、2,3日ほっておいてもそれはそれで美味しい。
 そうなったらなったで水分が大いに抜けて、琥珀みたいになってくる。これもう、塩辛い、やわらかい、琥珀である。ちびっと箸先になすりつけるだけで酒が飲めてしまい、もう酒でも飯でもなんぼでももってこい、というテンションになってきてしまう。

 琥珀のようになった卵黄は、あまりの粘度に、歯の隙間にねっちり詰まってくる。しかしこれすらもう愛おしい。そこに日本酒を含むともう踊りだしそうになるくらいうまいので、飲める各位、あるいは飯を食える各位はぜひやってみていただきたい。

 そして、このレシピにはとてもよい副産物がある。多少卵黄の水分・成分を含み、ゆるくなった味噌である。
 これを活用したレシピがまたいちいち美味しいのだが、そろそろ記事の長さがあれなので、これについてはまた次回語ることにします。

 とりあえず今回のエントリのまとめとしては「生卵がダメな方も、卵黄の味噌漬け、やってみ」っていうことでひとつ。

風雲ぬかづけ録4:水気との戦い

 不定期連載(?)風雲ぬかづけ録。その4回目は、ぬか床をこしらえ始めた人ならたぶん誰もが直面しているであろう「水分」に関するトピックです。

 

 当家のぬか床担当管であるたぬき、ぬか床をかき回すたびに「ぬか床がみずっぽい」という問題に直面する。職場のぬか床仲間を話しても、みんなそこそこ「ぬか床からどうやって水っけを抜くか」という問題には直面しているらしい。

 

 そも、ぬか床というやつは乳酸菌のパワーを借りてはいるものの、要するに塩漬けを何度も何度も行う閉鎖空間であって、そりゃ野菜の水っけでビッショビショになるのは道理だ。そしてビッショビショになったぬか床というのは、どうやら乳酸菌によるかもしに悪い影響があるらしい。そんなわけでぬか床を拵えている人たちというのは、必然的に「どうやってぬか床の水分量を適切に保つか」というポイントを試行錯誤するのだという。

 

 たぬきがざっくりと調べてみたところ、ぬか床の水分量調整に関しては

・ガーゼとかタオルとかで吸い取ってしまう、という派閥

・スプーンとかで都度水気をすくって捨てる派閥

・水抜きはしないで、ぬかを足して硬さを上げる派閥

 等があるらしい。

 

 それらを踏まえて、たぬきは考えた。

 単純に水分を邪魔者扱いして、捨てたり、あるいはぬかをガシガシ足したりすることは容易にできるんだろうけれども、もうちょっとこの「水分」というやつを有効につかって、ぬか床の完成度をあげていくことはできないのだろうか?

 

ーーというわけで、調べてみたところまぁやっぱりみんな同じ問題に直面しているだけあって、いろいろな解決策が出てくるわけですね。代表的なものは「乾物をいれて、水分を吸わせてしまおう」という解決策だ。

 代表的なのは、干し椎茸、板昆布、切り干し大根である。当家で試したところ、それぞれ違った特性を発揮していい具合になったので、その結果を紹介しておきたい。

 

◎干し椎茸

 


 

 どんことかのでっかい丸いやつはけっこうお値段がするんだけれども、そんないいやつは正直勿体ないので、訳アリ品というか、不揃いなやつを刻んで干したやっすいやつで十分役割を果たせると思われる。

 旨味成分グアニル酸の効果もあるだろうし、また水分の抜けを助長して発酵を促進することも手伝うのだろう。なんとなくぬか漬けの味がまーるくなる気がする。

 当家では、なかば肥料としてぬか床にすき込み、回収できたら食べるけれどもそんなに神経質に拾って食べはしていない。細切れだからキリないし。

 

 

◎昆布


 

 板昆布干したやつね。適当なグレードのやつでいいと思います。当然良い昆布であればあるほどぬか床のクオリティが上がることは言うまでもない。

 こいつはグルタミン酸要員で、同時に多少の水を吸う担当。直接食べるわけではないので、うちではぬか床の一番底で、味の土台になってもらっています。

 

◎切り干し大根


 

 むっちゃ水吸う。でもむっちゃバラバラになる。

 ガーゼか何かでひとまとめにして漬けると一家離散の悲劇が避けられる。

 切り干し大根のぬか漬けとして食べてもよし、柑橘系の汁で和えてもよし、ごま油とにんにく足してナムル風にしてもよし。切り干し大根は間違いなく水が吸えて即座に一品になるのでとてもおすすめ。

 

 その他、世間には並み居る乾物があって、ひょっとしたらぬか床とさらなるベストマッチをするやつもいるのかもしれないが、当家での実践レポとしては以上です。

 

「こんなやつが具合よかったぞ!」っていうレポート等あれば教えて下さい。

 

 

 

 

 

 

海苔の実力

 海苔というものについて、特別ポジティブなイメージを持ったことがなかった。

「ウチは海苔を愛してやまないぞ!」という方が居たら申し訳ないが、長らくくまは海苔という食品について、海苔巻のときにつかう飯の土台というか、ラーメンの薬味というか、そういう特に味がどうこうといった価値観を組み合わせないで生きてきた。

 兎に角海苔は海苔の顔してそこにいることが重要なのであって、うまいまずいというのは、ほんとうにお高い一握りの海苔にのみ発生する、ウチには関係のないマターだと思っていたのである。

 

 ところがどっこい。

 うまい海苔は案外身近に転がっていて、案外普通に「のりがうまい」という体験が出来たので、この度はソレを報告したいと思います。

 

 良い海苔は、高い。

 それはもうお約束だ。特に板海苔。山本山とかが有名ブランドでしょうか。あと地方によっては浜乙女とかかしら。

 いまググったところによると、良いのは一箱8000円くらいする。そんなもんを日常的にはとても買えはしない。

 

 しかし、あれだ。

「味が良いもの」がすべからく高いわけではない。その代表例として、道の駅とか物産展で買うような品物は、そんなにお高いわけじゃないけれども、ちゃんと美味しいじゃないですか。

 然るべき機関による選択とブランディングを経ないで、産直みたいな仕組みで食卓に届いてくるタイプのやつは、お宝めいた、クオリティの割にお安い商品がごろごろしていたりするーーと思う。

https://yunohana-shop.ocnk.net/product/7

 そんな次第でこの度購入したのは、南伊豆漁協謹製「磯の恵み」。岩のりをひっぺがして焼いて乾かして詰め合わせたやつだ。どこそこ株式会社ってんではなくて生産者が「漁協」ってあたり、なんか信頼できる感じがしてくるでしょう。

 明示しておくが、この商品は板海苔ではない。なので香りと食味と歯切れの両立、みたいな、良い板海苔に求められる諸要素は、当然ながら満たされることがない。ただその分、味と香りに仕様をガン振りしているので、たとえばお蕎麦の薬味にするとか、お味噌汁の具に浮かべるとか、そういった使い方をするぶんには好適である。

 

 恥ずかしながら、「海苔の味」というものがあることをくまはこの商品で初めて知った。海苔というのは「風味だけ」の食べものだと思っていたのだ。

 ほらだって、ポテチとかの「海苔塩味」って要するに海苔臭い塩味だし、海苔の佃煮だって海苔臭い佃煮味じゃないですか。「海苔の味です!」っていう自己主張でもって舌に触れるモノじゃなかったんですくま的に。なので、海苔というのは風味原料だと、この商品を食べるまでは思っていたわけですよ。

 

 そうしたらこの商品。良い風味・香味がするというのではなくて、ちゃんと「海苔の味」に舌が晒されるんですよね。初めての経験だった。

 出会いは近所のスーパーでやってた催事である。興味本位で買ってみて、そしたらあんまり風味豊かで、そして「食材として」美味しくて、以降数日おきにスーパーへ出向くたびに、家に在庫があるのに一つずつ買い足して、以降当家からこの海苔がなくなったことはありません。ーーなどと書いてしばらくしたら無事にスーパーからこのグッド海苔の在庫はすべてはけてしまい、当家は無事海苔難民になった。

 蕎麦に素麺に、また味噌汁に、そのままおつまみにと八面六臂の大活躍をしている。もっと早く知れたら良かった。

 

 しかし具体的な食レポがないあたりで察していただけたと思うけれど、「海苔味」というものを人に説明するのは難しい。うっすら塩辛くて滋味があって、という感じなのだけれど、そもほらコレ読んでいただいている中で「海苔の味」ってイメージできていないでしょ。

 「ないもの」をゼロから記述するのは、「既知のもの」のイメージを想起させるより難しいんですってほんとに。

 

 今回のご紹介した海苔は、販路がほんとうに無い。通販できなくはないが、かなり手を出すのに勇気がいるお値段になってしまう。

 そこで今回のエントリのシメとしては、今回紹介した上掲の「磯の恵み」じゃなくてもいいから、ちょっと海苔にお金かけてみて欲しい、気にかけて欲しい、という方向で終わりにしたいと思う。

 和食や麺類、日本酒やビールの相手をするのに持ち駒が増え、いっそう豊かな心持ちになりますのでとてもおすすめです。