豚カレー、下茹でのススメ。
主に豚バラ。
ーーと、これで話が終わってしまってはわざわざパケット割いてこのエントリを読んでもらっている意味がないので、もうちょっとめんどくさい話をしよう。
肉類の下茹では、しなくてはならない。
これはアラサーになって当家がたどり着いた一つの真理だ。
いい歳になると、肉の脂がきつい。
読者諸兄、おもわず「あるある」と首肯しておいでのことだろうと強く思う。
以前、ポークカレーを拵えたことがある。今は昔、鉄腕DASHの潜水艦カレー回、海自式ポークカレーにならって、豚肉をゴロリといれた食べでのあるやつだ。
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※アフィリエイトは味のイメージです
最初は「ポークカレーだ!」と喜んだ。実際とてもうまかった。ホロホロのお肉にプルプルの脂身で、あっこれおうちカレーの完成形できたわと思った。食べた瞬間は。
しかしその後。たぬきが胃のあたりをさすりながら力なく横たわってしまった。重かったんだそうである。
厳粛なる軍法会議のすえ、法廷は調理を担当したくまを有罪とした。材料選定が悪かったのだ。
「きっとトロトロ美味しいに違いない」との考えから、あとついでにスーパーの安売りの都合から、良かれと思って「豚バラ肉で」カレーを作ったのである。表面をこんがり焼いて鍋に叩き込み、野菜もろとも圧力をかけてコトコト煮込んだ。
その結果、これでもかとスープに旨味と ラード が溶け込んだ、激重のカレールーが煮上がったのだ。いやすごかったよ鍋を静置してると表層にラードの膜がうっすら張るんだ。
かろりー いず でりしゃす と人は言う。主に鍵条漆さんとかが言う。こつめってぃもっと流行れ。
しかし限度ってものはある。
口にあたる脂っけが少なくないと、アラサーに突入したわれわれは、満足にメシを美味しがることができなかったのだ。
ちょっと考えてみて欲しい。「美味しいけどめっちゃあぶらっこいカレー」と「ふつうの鮭茶漬け」を天秤にかけてみたとして(なんなら永谷園のアレでもいい)、アラサー以降は「カレーか、良いけど脂っこいのは困るな」って決断に迷いが入るでしょう。それですよそれ老いってやつの片鱗。十代のころはノータイムでカレーって言えるでしょ特に男子諸君。
いささか脱線したが、まぁそんな次第で、「おうちかれーの完成形」というのは、「下茹でをした豚バラ」で作るべし、というのが現在の当家が持ち合わせる、最強のおうちカレーに関する知見だ。
あのふるふるした脂身や結合組織の美味しさは諦めるにはあまりに惜しい。ロースやモモとは違うバラならではの「うまさ」がたしかにあるのだと信じている。脂はとっても重いけど。
ーーしかし。
現在たぬきは糖質制限を宣言しており、ごはんもののお呼びがかかってこないので、「下茹で豚バラカレー」が実戦投入される見込みはまったくない。
美味しいカレーができたら、また更新したいと思います。
ウミノ麺最強説
ウミノ麺。
そう呼ばれるおそうめんのバリエが、当家の夏の定番だ。
ご察しの良い読者諸兄はすでに気がついておられるであろう。ーーというか、あのそうめんをネタにしたブログエントリは枚挙にいとまがなく、当ブログで何番煎じであるかわからない。
しかしうまいものはうまいので、ぜひシェアしたいと思い、筆を執った次第だ。
ウミノ麺ってなんですか。
まだピンときていないあまりにありがたい(ご存知の方ばっかりだったら、このエントリまるごと意味ないからNE!)読者のために注釈しておくと、「ハチミツとクローバー」「3月のライオン」でおなじみ羽海野チカ先生が、「3月のライオン12巻」の劇中に登場させたおそうめんだ。
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野菜と豚をいれて生姜を効かせた熱々のめんつゆに、キリキリに冷やしたおそうめんをくぐらせて食べるという寸法の代物だ。おそうめんのつけめん、そう表現するのが、今日日ではもっとも適当であるように思われる。
そのレシピを、ざっくりとご紹介しよう。
詳しいところは、ぜひ漫画のほうを買って読んでください面白いから。
【材料】
・なす それなりに
・たまねぎ たべたいだけ
・きのこ あったらでいいよ
・しょうが ひとかけ。こいつがキモ
・お肉 切り落としとか細切れとか。豚でも鳥でも美味しいはず。牛ではやったことない。
・おそうめん 普段の量+1把くらいがいい。
・大葉 薬味として。なくてもよいがあればあるほどよい。
なお、当家のイチオシは揖保乃糸。
最近知ったことだけれど、揖保乃糸にはいくつかランクがある。よくスーパーで見るのは「上級」ってやつで、これは普及型だ。
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その下……というかバリエに「太づくり」、上に「熟成麺」「播州小麦」「縒(より)つむぎ」「特級」「三神」というランクがある。おたかいスーパーとか、あるいは贈答品でやりとりするようなおそうめんは後ろのほうのランクで、まぁ顕著にうまい。
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とはいえ今回は揖保乃糸について詳しく説明するエントリではないし、厳密に食べ比べた事があるわけでもない。お財布と相談してリーズナブルなところをつかってください。
【手順】
1.ナス:一口大、玉ねぎ:串切り きのこは割いて、生姜は千切り。
大葉も千切りにして水気を切っておく。
2.ごま油で生姜を炒め、香りを出したら野菜とお肉を加え炒める。
3.めんつゆを入れ、好みの辛さに。目安は「飲めるけどちょっと辛い」
4.そうめんを茹で、冷水で締める。
5.あとは好きに盛り付けてつけ麺スタイルで食べる。
生姜は多めが大人うまい。
小さな子が生姜をもろにかじると多分泣くので、その場合にはおろしショウガもやむなしかと思います。
めんつゆのしみこんだおナスから汁がジュワワと溢れ出し、玉ねぎは淡い歯ごたえを残して甘く、そこで肉がどっしりとした存在感を放つ。そして生姜の香気が全体を掌握するなかで、たまに千切りが歯に当たり清涼感ある風味が炸裂する。
そこへ薬味の大葉をぶっかければ、もう「夏食ってる」感で箸が止まらない。
で、これがどう良いのかというと、まずおなかがひえない。
夏は冷やし麺、空調の聞いた部屋でキリキリに冷えた麺を…というのはどうもおっさんの理屈であるようだ。たぬきをはじめ女性陣は、暑いのは嫌であるが体を冷やすのは嫌だというアンビバレンツな感情をお持ちであることがあるという。
その点こちらのウミノ麺であれば、麺ひやひやの汁アツアツであるからして、氷水に浮いていたようなそうめんを冷たいめんつゆですすり込むよりも格段におなかによい。そのうえ生姜まで入っていて身体によい。この時期うれしい夏バテ対策にももってこいだ。
また、野菜がたくさん食べられるのもうれしい。おナスや玉ねぎをはじめとし、入れようと思えばしめじなり舞茸なり何でもいれてよい。たくさんの野菜をめんつゆ味のもとに糾合しておそうめんをやっつけるのである。ここにおいて肉は欠かせぬバイプレイヤーであって、主役でない。野菜類こそが本体であるので、各位大いに野菜による物量戦を仕掛けて欲しい。たぶんナスの一袋や二袋は余裕である。
最後にべらぼうに食が進む。
ウミノ麺は、ネギ生姜めんつゆのオーソドックスなそうめんと比べて、味の情報量が多いと思っている。だから「ちょっとこの味飽きてきたな」という「なんかもういいや」のタイミングが、ふつうにおそうめんより遅い気がするのだ。
マットな「つゆ+そうめん味」に多用な薬味で手を変え品を変えのインパクトを与えて美味しく食べきるのが、いわゆるふつうのおそうめん。道端の様々な植栽が楽しい散歩道みたいな感じ。目には楽しいが所詮平坦な道であって玄人好みではない。
一方でウミノ麺は食感が色々楽しく、風味を加える要素も多い。味のアスレチックコースである。冷熱の温度差、様々な味の差異、風味の差異によって飽きさせずに箸が進むため、ウチでは一人3把、夫婦ふたりで揖保乃糸一袋が行けてしまう。
とはいえ、ウミノ麺とはいえ万能無敵ではない。当然弱点はある。
具材を揃えるのがめんどくさいとか、野菜を刻むのがめんどくさいとか、生姜ひとっかけ使っただけで残りを死蔵しがちとか、麺とつゆで鍋が2つ塞がるとか。
そしてやっぱ問題なのは、「夫婦二人で揖保乃糸が一袋いけちゃう」ことだとおもうんだよな(じつと腹を見る
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風雲ぬかづけ録1 「もみーな」はいいぞ編
たぬきの家にはぬか床がなかったらしい。
くまの家では祖母が専業主婦で、ぬか漬けは日常食であった。まぁそれはいい。
問題は、目下ずぶの素人ながらぬか漬けという底しれぬ沼に挑んでいるたぬきが、ぬか漬けというカルチャーの、まったくの門外漢であったことだ。
我が家では、ぬかどこの担当はたぬきである。くまはああいうねとねとしたものは好かない(なので、くまはパンもハンバーグもこねられないし、幼少期には泥団子遊びをしたこともなかった)。それゆえ当家では、もっぱらたぬきが、ぬか漬けがどうしたら美味しくなるかと試行錯誤をしている。
今後幾度か当ブログでは、ぬか漬け試行錯誤の記録をアップしていきたいと思っている。当家われわれ自身の備忘録のためだが、もしもぬか漬けという沼に挑まんという人がいるのであれば、その道行きの手がかりにでもなったら幸いだ。
閑話休題、とにかくたぬきとぬか漬けの話である。
何年前だったか、近所の飲み屋でおしんこを頼んだところ、たいへんうまいぬか漬けがでてきた。それにいたく感激したたぬきは、このうまいつけものをもっと食べたい、と強く考えたらしい。
しかし、ぬか床の相手というのは、とかく「めんどくさい」。いやもうちょっと言葉を選ぼう。「とかく手間がかかる」。朝晩2度ぬか床をかき回してやるのは、めんどくさがりの当家にとってはなかなかの骨だったのだ。
そこでたぬきはめっぽう探した。そして掘り当ててきたのが「もみーな」である。
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これはよかった。
ぬか床というのは(ご存知のかたも多いであろうが)最初は捨て漬けという作業が必要である。これにより、ただ糠と塩とだし原料と水のペーストにすぎないところに、野菜の表面に住み着いている乳酸菌を加え、正しく「ぬか床」となさしめるのだ。これがまぁすっげーめんどくさい。
その点もみーなは、最初からいい具合に醸されて味もついたぬか床がパックの封を切ったら即使えるので、喜んで野菜を漬けた。
以下は余談だけれど、もみーなは実際良くできている。チャック付きビニール袋に入っており、ぬか床用の容器がいらない。ビニール袋なのでヌカ臭さも漏れてこない。
そして「ぬか床」じたいの「味」も抜群によい。なんか信州味噌とか入っている。とても深みがあって「いい塩梅」のお漬物が作り放題となる。
とりあえず「ぬか漬けには興味があるが、ぬか床を育てるのは億劫だ」というご家庭にはぜひ使っていただきたい。ぬか漬けスターターパック、ビギナー向けパックとしてはこれ以上のものは無いんじゃないかなって思う。もみーなはそのくらい良かった。
閑話休題、ーーそして程なく、野菜から出た大量の水分でもみーなは死んだ。
たぬきは悲しみに暮れながら、最後漬けとして魚や肉を漬け、焼いて美味しく食べた。
何ヶ月かもみーなを使い、その屍の上でたぬきは考えた。
「これはコスパが悪い。」
もみーなは一人300円くらいする。そしてぬか床として機能するのが1週間強だ。もちろん用法用量を守って使えばもっと持つのかもしれないが、ウチの野菜の投入量では、彼女のキャパシティはそれが限界だった。
ざっくり計算するに一月のぬか漬けライフにはもみーなが3人くらい必要で、つまるところぬか床それ自体の費用として月1000円くらいするわけだ。ここにぬか漬け代ーーつまり野菜の代金は入っていないから、毎日野菜代が別途かかることになる。
「日本古来の漬物が、そんな高いわけあるか」
あまりのランニングコストにたぬきは強く憤り、他になんか手がないかと日夜スマホを握りしめ、理想のぬか床を求めて電子の海をさまようのだった。
ーーといったところで、今回はここまで。
とりあえず今回は、「もみーな」はいいぞってところだけ、覚えて帰ってくださいな。
より良いぬか漬けを求めるたぬきの戦いは今後も続く。