古参調味料:煎り酒
煎り酒。知ってますか。
それなりに料理をする方だったらご存知だろうと思う。日本酒一升と鰹節と梅干しで作る、江戸期の代表的な調味料だ。いまのように醤油が庶民みなに一般的に用いられるようになったのは割合最近の話であるようで、ソレ以前、醤油のような「塩っ辛い調味料」のポジションには煎り酒が居たのだという。
あ、これ伝聞レベルの話をそのまま正直に書いていますから、人に話すときはちゃんと裏付けを取るんですよ。
話が若干ずれたけど要するに、日本酒でかつおだしを取って、塩っけは梅干しで足して、それをうんと煮詰めたやつだ。なーんとなし、味や風味の方向性は想像がつくと思う。
ただ「レシピを知ってて味の想像ができる」ことと「家で作る」ことは全く別問題である。大量の日本酒なんぞ飲むに決まっている(そこか)。そこに鰹節をわさわさ加えてーーったって最近はどこもだしの素に切り替わっていて、鰹節なんか薬味程度の小袋しか用意がないお家が大半だろう。梅干しだっておいてないお家が多いのではと思う。
そして一升以上できる液体を半量以下まで煮詰める手間たるや、なにかと忙しいなかで制作される家庭料理とは全く相性が悪いと言わざるを得ない。
当家としても、煎り酒に興味はあった。しかしそれを自作しようというのは、料理には興味津々な当家といえども、全く現実的な考えだとは思われなかった。
しかし世の中というのは広いものだ。煎り酒、売ってました。
カルディに売っているよ。通販でも手に入る。まぁ結構お値段はします。
でもね、これがきっちり値段分うまいんだわ。
当家としては、「お刺身の調味料にする」のが一番美味しいと思っている。というかもったいなくて煎り酒の存在感がたしかに出てくる料理にしか使えない。300mlで1000円以上するものを、気軽に煮物や炒めものにブチ込むことは怖くてできぬ。
あ、でももう時期過ぎようとしているけど冷製パスタの味付けだとか、高い調味料であることに目をつぶって鶏肉とズッキーニの炒めものなんかにジャッと回しかけて味付けするとか、そういった用法でぜんぜんおいしいです。
閑話休題、とにかくイチオシはお刺身ですお刺身。そこに煎り酒を垂らして食うのがめっぽううまい。
ただし、合わせる魚には縛りがある。白身、光り物、貝類、エビに限る。要するに赤身以外ってことだ。赤身相手には、全く戦えないのだ。
まぁ考えてみれば当然の話で、赤身の魚をありがたがって食べるようになったのは最近だ。マグロは長く下魚として扱われてきたし、そのトロなんて、猫すらまたいで通るってんでネコマタなんて言われていたと聞く。そういった味の強い魚を食べる文化、脂の強い魚を食べる文化は、煎り酒が醤油に取って代わられちゃってから生じたムーブメントであるように思う。
全く根拠のない話であるけれど、むかーしむかしのマグロが下魚であった時代というのは、醤油が普及していなくて、煎り酒でマグロ食っても美味しくなかったから、あんまりいい扱いをうけなかったのかなーなんてことを思ったりもしている。それが醤油の普及によって、「あっこれ醤油で食うとうまいじゃん」的なことで価値が入れ替わったのかなって。
まぁ、学術的な裏付けとか全然とってなくて気分で喋っていることなので、あんまり真には受けないでください。
入手が面倒な調味料で恐縮だけれど、お近くにカルディがあれば、そこで入手が可能です。売り場には無いかも知れないけど取り寄せをかければなんとかなるよ。
食生活を豊かにする「煎り酒」。ぜひ一度でいいからお試しいただきたい。高いけど、高いだけのことはあるから……!!