たぬきとくまの台所

平成生まれのアラサーのたぬきとくまの夫婦の台所

うまいぞ、すだちあゆ

 気がつけばもう晩夏である。立秋はもうすぎてしまったので、暦の上ではもう秋だというのが信じがたい。しかし2週間もすれば9月になってしまう。

 このことは、当家にとってちょっとした事件である。

 鮎の時期が、終わるのだ。

 

 もうこんな時期になってしまったけれども、せめてまだ食えるうちに鮎の話をしなくてはと思い、慌ててブログを書いている。

「こういう記事は旬の走りに出せよ!」というのはまったくおっしゃるとおりであるけれど、しかしかといって1年寝かして来年の初夏に、なんて悠長なことを言っていたら絶対忘れてしまうので、どうかご勘弁いただきたい。

 

 鮎、お好きですか。

 スーパーの片隅を占めていますね鮎。そろそろ終わる時期ですけど、しかしまぁあんな美味しい魚がよく居たものだと思う。はらわたまで食える数少ない魚だ。

 

 夏は鮎、秋にはサンマ。ハラワタが旨い魚の2巨頭である。方や草食なので、もう方や消化管が大変短くて内容物が残留しないので、生食が許されるらしい。まぁ詳しいことはよく知らないけど美味しいからそれでいい。

 

 閑話休題、鮎には天然と養殖とあるじゃない。多くの場合、われわれ庶民の手に入るのは養殖鮎だ。

 当家夫婦の郷里は岐阜なのだけれど、岐阜に暮らしているからといって特段天然鮎へのアクセスがしやすいなんてことはない。長良川とかなんとかで上がった天然鮎はしかるべき手段で然るべき料亭や料理屋に流れていく。

 川魚を食う文化というのは岐阜にはたしかにあって、ちょっと気の利いた料理屋さんへいったり、あるいはご家庭での晩飯の選択肢として鮎というチョイスが浮上する機会は、おそらく関東や近畿一般の方よりは多かったのではないか、とは思うのだけれども、とはいえ所詮は庶民の家の話であるからして口に入るのは当然安価な養殖鮎であった。

 

 しかし養殖鮎は、果たしてほんとに美味しくないのか。天然の一人勝ちなのか。

 そういうもんなんじゃないの? 価格差が厳然としてあるんだし。ーーと、なんとなくそう思っていたのだが、しかし先日、養殖鮎も生産者の努力によって、今めっちゃうまいんだぞっていう事がわかったので、この記事を書いている。前置きが大分長いけどそれだけ思い入れのある食材なのだ。ご勘弁ください。

 

 さて本題に入っていくのだけれど、去年「すだち鮎」なるものに出会った。

 鮎養殖といえば和歌山がメッカであるらしいのだけれど、こいつは徳島産、名前のとおりすだち果汁配合の餌を食って育った養殖鮎だ。

 

s-iwasaki.com

 生産者さんは、ある時「なんで俺、天然鮎と張り合ってんの」「養殖鮎ならではの良さってものがあるでしょう」と天啓を得、最強の養殖鮎づくりをはじめたらしい。そして徳島ならではの地の利を得、この世に生まれいでたのがすだち鮎である。

 

 ーーなどと書くと仰々しいが、なんのことはない、当家では普通にスーパーで買った。いつもあるわけではないにせよ、うまくタイミングが噛み合えばスーパーに並ぶくらいには販路があって、ポピュラーなブランドであるらしい。

 しかしこれが、その入手のお手軽さとは裏腹にすごいんですよ。

 

 当家がびっくりしたのはまず見てくれである。毎年恒例の鉄腕DASHで学んだことだが、うまい鮎には「追星」という模様ができる。体側の黄色い斑点だ。これがあるやつは大きく育っておりうまいという。大変良く育ったやつには追星の追星すらあるとかなんとか。

 これはとっても環境のよいところで育った鮎にしかないもので、大半の養殖鮎には追星がない。ちょーっとこいつ体側黄色いか? くらいが関の山だ。

 しかし「すだち鮎」は多くが追星を持っている。この時点でもう丁寧に上手に育てられたことが伺い知れる(などといきり立っていますが門外漢です)。

 

 見てくれにびっくりしたらば、次には嗅覚で驚く番だ。鮎は香魚との異名も保つが、しかし養殖鮎の多くはそんなにいい匂いはしない。しかし「すだち鮎」はものすごく青い、ウリ科の香りが強いのだ。鼻から入ってくる情報は完全にキュウリやシロウリのそれである。でも持ってる手からは川魚のぬとぬと感がする。何触ってんだかちょっとわからなくなるぞ。くまはなったぞ。

 

 さて、見て嗅いでびっくりしたら、あとは塩振って焼こう。当家の魚焼きグリルはこわれているので、苦渋の決断ながらフライパンで焼いた。そうしたらば、えらいことになった。

 串焼きの魚から、脂がジブジブと煮え立って垂れ落ちる絵面、よく見るでしょう。シズル感たっぷりでそそりますよね。

 あの脂がものすごく出、フライパンで焼いているので当然鍋底に貯まる、結果、なんかもう焼いてんだか油煮にしてんだかわからないくらいの騒ぎになるのだ。この時ほど、当家にまともな魚焼きグリル、贅沢をいうなら七輪があればと思ったことはない。

 

 で、なんかかんかあって鮎が焼けたとする。そうしたらあなた、あとは食べるだけですよ。焼いてなお香るウリ科の青い香りとか、一段深いコクと苦味のワタの味とか、もうね、たまらんです。記憶だけで呑めそうなくらい。

s-iwasaki.com

 

 今年、まだ間に合うかな。以前問い合わせたときには、メールをくれたら個人通販やるよ的なお返事を頂いた気がしますので、気になる方は問い合わせてみてくださいね。

 鮎の話、おわり!